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我闘姑娘シーズン2 「プロレス少女たちの野望Vol.2」
第7話 無題      


試合が終わった。
泣きながらリングに上がり、倒れたままの市井の元に駆け寄った早乙女。
早乙女を下からぎゅっと抱きとめた市井。











いったいどんな形でこの興行の幕を引くというのだろう。
場内はシーンとしたままだ。
その静寂を打ち破るかのように、さくらが語り始めた。










舞!お前やりたいことやって強くなったのかよ!あんたがやりたいプロレスってこんなプロレス
なの?あんた旗揚げ戦が頂点だったんじゃないの?かっこつけてばっかりで、下の選手に
抜かされて・・・。血流したくらいで勝てるほど甘くないんだよ!なんか言いたいことあるの?


正直言って、プロレスなんてわかんねーよ。ファンでもなかったし、何でもなかった。
だから何が正しいのかなんてわかんねー。
夏樹・・・今日はいいもんもらっちゃったな。
自分のやりたいことも目標もまだまだ中途半端だけど、、自分は誰かに従うんじゃなくて、
自分の力でやりたい。こういうプロレスは正しいのか正しくないのか、正直言ってわかんない。
でも止まってたらどこにもいけないから、自分はもっと強くなるために、
もっと色んなところに出たい。自分はもっと闘いたいです。





じゃあ我闘姑娘ってなに?我闘姑娘じゃ戦えないの?リングは闘うとこじゃないの?
闘うって何?誰となら戦えるの?ここにいるのはプロレスラーじゃないの?
どこのリングならできるの?我闘姑娘じゃできないの?

我闘姑娘でもっともっと思いっきりやったり、よその人を呼んだり、
もっともっとみんなが一生懸命なプロレスがやりたい。
いま旗揚げが頂点って言われたけど、それは我闘姑娘も一緒なんじゃないですか?
みんな、もっともっとできると思います。








市井、お前のそういう顔、久しぶりに見たよ。
いや、初めてかもしんない。ずっと“口だけ番長”だと思ってたから。
周りからじゃなく、お前の気持ち次第でいくらでも変えられるんだよ。
自分はお前に変わってほしい。
舞組か猿組かわかんないけど、今のままじゃ・・・












舞さんはプロレスはわかんないって言ったけど、さくらさんのやり方もあるし、
舞組のやり方もあるし、夏樹さんみたいに外でドンドン闘うのもひとつのやり方
だと思います。もっと闘いたいなら夏樹さんと一緒に外で戦えばいい。
我闘姑娘は我闘姑娘で、舞組もそのままで、夏樹さんと一緒にたまに外で経験
積んできてもいいんじゃないですか?
我闘姑娘もちゃんと舞いさんが思い切り闘えたと思わせるようなリングに私が変えます。










自分も我闘姑娘を変えたい。今日だって強い者を決めるトーナメントをやってきて、
なんで最後がタッグなんですか?意味分かんないです。
結局は舞組を上げるためだけの興行なんじゃないんですか?


舞組、上がってないじゃん!

こんなにいい選手がいるのに、最後は舞組じゃないですか。
多分今の我闘姑娘は、頑張っても上にいけない、頑張らなくても上にいける、
そういうところだと思います。


     (さくら、ベルトで夏樹を殴打)

なめんな!お前に何がわかる!
みんな、夏樹に我闘姑娘はプロレスじゃないって言われてんだよ!あんたら何がやりたいの?



自分は、我闘姑娘が大好きです。

うそつけ!

選手のみんなも好きだし、えみさんも好きだし、夏樹も好きだし、
みんな仲間じゃないですか。
でも、いろんな考え方の違いとかあるし、夏樹が我闘姑娘をよくしたいって
言ってるの自分知ってるし、えみさんが、もっと、もっと舞頑張れって言ってるのも
全部知ってるんです!








だから、だから今日だって、ギブアップしないで、頑張ったし、
自分は、何もないけど、えみさんから教えてもらったプロレスが全てです。
みんな真剣に悩んでるんです!
誰も否定してないですよ。
だから、もう一段階、みんなで、上に行きたいんで、ちょっとでいいんで、
ほんの少しでいいんで、時間と、自由と、与えてください。










舞ちゃんのことすごい助けてきてあげたけど、これからは一人で頑張って。
すっごいフォローしてきてあげたけど、これからは一人で頑張ってください、
はいみんなリングに上がって。

みなさん、我闘姑娘は旗揚げしてからいろいろあって13名になりました。
いろんな選手からの影響があって13通りのプロレスがあります。
私はすべてを表現して欲しいと思ってますが、みんなまだまだ新人で・・・。
毎回毎回ハッピーエンドになるわけじゃなくって選手も・・・
いろんな気持ちがぶつかりあって・・・・
我闘姑娘はいろんな形に変化していきますが、ガトークーニャ・・・2年目・・・
選手一同頑張っていきますので、これからもよろしくお願いします。



それぞれが思いのたけをぶつけた様を「不毛」と決めつけていたのは
乱暴だったかもしれない。
ただ、客に見せるべきものではなかったという考えはいまだに変わらない。
やりとりの全ては日々の練習であったり、ミーティングであったり、
試合前や試合後のバックステージであったり、そういう人の目に触れない
場で解決していくべき類のものだろう。

そして内部の側にいるとはいえ、子供たちにとっても酷な場面すぎた。
きっずたちはこの大人たちのやりとりを、一体どういう思いで眺めて
いたのだろう?



 激しい失望と徒労感。
 こんなはずじゃなかったのに。
 旗揚げ以来の新木場を、こんなやるせない思いを抱えたまま後にしなければならないのか?
 「プロレスで、ハッピーになろう」って言ったのは誰だったんだよ?


 撤収を始めた選手達を、ぼーっと眺めていた。
 ロープ際で、春日があいかに何やらささやいているのが見えた。
 止まりかけていた心が、再び動き始めるのを感じた。



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