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我闘姑娘シーズン2 「プロレス少女たちの野望Vol.3」
第6話 枕詞


さて、セミ。

このタイミングで二人のシングルというのは、非常に危険な香りがする。



睨み合い。握手はしないままゴング。







右手を差し上げた夏樹に呼応する形で試合は始まった。
手四つ。












エルボーの打ち合いに移行すると、市井は凄まじい表情を見せる。













打ち勝った夏樹はバックを取り、スリーパーで締め上げていく。













仰向けになってのスリーパー、ヘッドシザースから脱出した市井は
ドロップキックから逆片エビ、その後はお返しのヘッドシザースへ。












リング下では、いつになく険しい表情で春日が闘いを見つめている。













夏樹が頭ならば市井は蹴りと、やはりゴツゴツとした打撃中心の試合だ。


うーん。
悪くはない。
ないのだけれど、単調だ。
試合に奥行きが感じられない。
あらゆるものを削げ落とした”原始的”な闘いは、うまく行けば息を呑む
熱戦になることも往々にしてある。





この試合がそうなってはいないと感じているのは、前回新木場での闘い、
そしてエンディングを見た時の”感覚”が心の中に沈殿しているせいなのか、
それともこの試合そのものに問題があるのか。











彗星キック。


他の選手であればフィニッシュとなり得る技も、夏樹を沈めるには至らない。










それでも徹底して蹴りを放っていく市井。













市井の彗星キックと同様、他の選手相手ならば終わっても不思議ではない
夏樹の息吹☆ヘッドでも試合は終わることがなかった。


市井、やっぱり耐性は人並み以上にあるんだよ。
夏樹を基準にして、そう思った。








夏樹攻勢。
コーナートップからのダイビングヘッド。












新たなバリエーションとして加わった、逆さ吊りへのヘッド。













最後は旋回式のダイビングヘッド。













問題はここからだ・・・




会場にいる多くの人がそう思っていただろう。
こちら側からよく見えなかったが、どうやら市井は本部席にマイクを要求
するも、断られたようだ。


マイクなしで、市井の独白が始まった。



自分の心が弱いから、この間のイベントも、みんなに
迷惑を掛ける事になって・・・
関係者とか、スタッフの人たちや、ファンの人達に、
本当に、申し訳なく思っています。
春日・・・春日にもすごい迷惑掛けちゃって、ごめん。









すげえすげえ中途半端で、夏樹が言ってたゴングの記事みたいに、
自分はすげえすげえ中途半端だと思う。
でも、みんなに迷惑かけてるの分かるし、自分がこういう風に言うことに
よってみんなにとってマイナスになるのも分かる。
だからすげえ申し訳なく思ってるけど、
自分は、夏樹と会って、プロレスに、惚れました。
プロレスは、すげえし、この我闘姑娘興行だって、
もっともっと凄くなる可能性を、夏樹にすげえ教えてもらった。






自分すげえ弱えーし、蹴りだって、よろよろしちゃうし、
みんなにだってすげーすげーすげー迷惑掛けてるけど、
自分は、夏樹が教えてくれた、ものすごいプロレスを、一緒にやりたい。
我闘姑娘で、やりたい。
自分は、我闘姑娘が・・・自分のプロレスの全てだから、
我闘姑娘で夏樹と、一緒に、この、夏樹が言ってた、すげーすげーすげー
プロレスをやりたい。
だから、みんなに、ほんとに、ほんとにほんとに申し訳ないけど、
自分は、夏樹と一緒に組んで・・・アテナとしてやっていきたい。
これが、自分の、悩んでいる全てです。






「メインに行ってください!」

さくらの一言で、長い間止まっていた時間が再び動き出した。


「迷惑を掛ける」「分かってる」
市井が語ったこれらの言葉は、単なる枕詞や接頭語にしか聞こえなかった。
それらを継ぐ言葉は、「でも自分はこうしたい」ということばかり。
前後の辻褄がバラバラで、これでは何の説得力も感じられないというしかない。
そもそも、前回は「外で」「自由を」と言っていたのに、今回は何故に
「我闘姑娘で」なのだろう?



本当に、このままでは我闘姑娘そのものがおかしくなる。
本当に、ギリギリの事態だよ・・・




          4.シングルマッチ30分1本勝負
          ×市井舞(13分35秒、旋回式ボンバーヘッド)夏樹☆ヘッド○




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