ある意味、この日最も注目すべき試合が始まる。
春日萌花は実姉と共にメイド姿で現れた。
「レディース・ゴング」誌上での姉妹対談をきっかけに実現した競演。
すっかり定着した、春日=レイヤーという図式からいえば、
「いつも通りの春日」であっただろう。
でも、この日は違っていた。いつもとはまるで違っていた。
前夜に書かれた、春日のブログ。
そこには春日萌花の市井舞に対する思いが、物凄い訴求力を以って
綴られていた。
「ハルヒのブログ、見ましたか?
驚きました。
その意気です。
頑張れ。
そして、勝て!」
朝、ミクシィの日記にそう書いた。
友達からコメントがついた。
「言葉から、行間から、すごく気持ちが伝わってきました。
がんばって!と気持ちを伝えたくなりました 」
別の友達からはメールがきた。
「春日のblogを読んだら行きたくなった」
そして、彼は会場に姿を見せた。
いろんな人が、この試合に”思い”を込めていた。
試合はロックアップで始まった。
市井が押し込みロープ際でエルボーを放つも、
春日は首投げからスリーパーを極める。
これを凌いだ市井は春日の背に乗り、キャメルの体勢へ。
春日は逆に乗り返し、市井の髪の毛を引っ張っていく。
いい表情だ。
ストンピングを放つ春日。
市井は起き上がって咆哮。
エルボーの後春日をコーナーに振って突っ込むも、春日はかわして
ロープ越しのお嬢様固めを極める。
ボディスラムを踏ん張られるや、体勢を解いて逆さ押さえ込み。
返した市井はボディスラムの3連発。
ここから市井の蹴りが始まる。
前蹴りからドロップキックの連打。
コーナーでは、市井の攻めをかいくぐった春日がお嬢様固めを極める。
そして四の字固め。
市井が反転する。
春日が返す。
四の字の形が解けかけると、春日は意外な攻めに出た。
アキレス腱固め!
これは初めて見る技だ。
左足で蹴りを入れ、逃れようとする市井。
体を反らし、左脇に力を込める春日。
脱出してスタンドの状態になった市井は、春日の背中にキック
を浴びせていく。
一発、二発、三発・・・
春日を立たせると、今度は背後から締め上げる。
ドラゴン・スリーパーの形だ。
表情が厳しい。
何とか逃れた春日はボディアタックで反撃。
そしてコーナーの市井に対して飛んだ。
一発、二発、三発・・・
一進一退、言い換えれば両者決め手を欠くともいえる状況。
しかしこの後、試合は大きく動き始めるのだった。
(続く)
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