夢の森。
逆井プロレス

−夢の森−



山田圭介主催興行(1998年10月25日、逆井プロレス道場)


Vol.1



 電車を何回か乗り継いで、ようやく辿り着いた東武野田線・逆井駅。
 遠かったなあ。でも本当に大変なのはきっとこれからだ・・・
 果たしてちゃんと見つけられるのだろうか?頼りは地番だけだ。


  「あ!?案内出てる!」
  「ん??」

 前方を見ると、「プロレス会場案内」と大書きされた電柱が立っていた。


 その上にはくくりつけられた、メモ用紙みたいなものが見える。

  「おおぉ!」
  「これはすばらしい!」

 その紙切れには、会場までの行き先が示されていた。
 もちろん、手書きだ。



  「う〜ん、何という素朴さ!」

 とにかく、これに従って歩けば大丈夫でしょ。
 早くも「手作りプロレス大会」の一端が伺えて、いやがおうにも期待が高まっていく。


 地図通りにのんびりとそぞろ歩き。途中は閑静な住宅街、といったかんじだった。


  「なんかイメージ違うなあ。もっとすごいとこだと思ってたけど」
  「この辺でランニングとかやってたのかなあ」
  「あそこの電柱からここまではハイ、ダッグウォーク!なんてやって
   たんじゃない?・・・やらねえか(^_^;」


 どうやら二人とも「手作り」「道場」のイメージに囚われて、えらくワイルドな
 環境を予想していたようだ。
 予想というよりも願望、だったのだろうか?
 ある程度進んで、再度地図に目をやる。円の中に「森」という字。




  「なんだぁ森って?大邸宅の森さんちか??(^_^;」


 はたして住宅街を抜ける頃、前方にそれらしきものが見えてきた。

  「あれが『森』、じゃない?」

 住宅街を抜けて出くわす車道の先に、木々の群れが顔を覗かせている。




  「おお、なんか雰囲気出てきた!」

 しばらくは車道沿いを歩く。

  「ここで・・・曲がるんだな」

 しばらくすると、裏ぶれた門柱のある建物に出くわす。 何かの施設のよう
 だが、使われている形跡が無い。


  「うわっ、なんか恐い」
  「あ、猫!」


 門の内側に猫の姿。こちらをじっと見ている。 猫には目のない二人が寄って
 いくと、ササッと逃げていっってしまった。

  「う〜ん、残念。絵になってたのになあ。」



 ハンドメイド地図によれば、もう道場には近いはず・・・なのにまるで最終関門
 の如く、3本に別れた道。


  「あちゃあ、こりゃわからんぞぅ」
 どの道も先の様子は見えない。
  「あった!出てる!」


 「逆井プロレス会場はこちら」
 という看板が、真ん中の道の脇に立てられていた。




 「これなかったら絶対わかんなかったよぉ」
 「うん、先進むのはちょっと冒険だよね」


 今立っている地点がまさに森の入り口、というかんじ。


  「いよいよハイキングになってきたなあ・・・」


 入っていく。


  「あ!?あれかなぁ。」


 建物の裏側らしきものが目に入った。
 1・2分後、拍子抜けするほどにあっさりと、逆井道場は見つかった。




  「しっかしあの案内図なかったら絶対迷ってたよねえ」
  「いやいやホントに」


 道場の前は庭。というよりも野原、だろうか?
 道場そばには選手たちの顔も見える。
 その他の人は関係者なのだろうか?
 客らしき人はほとんどいない。
 道場の中から、バンプを取る音が小気味よく響いている。



 逆井プロレス、4時開始。今はまだ2時を回った頃だ。


(つづく)


[BACK]