夢の森。
逆井プロレス

−夢の森−



山田圭介主催興行(1998年10月25日、逆井プロレス道場)


Vol.2




 「ちょっと写真撮ってくるわ」
 遊歩道に出て、生い茂れる木々の写真を撮った。




 それでもまだ時間は余りまくり。道場の前でとりとめもなく話をする。
 道場からは受け身の音に混ざってなぜか流れる、モーニング娘。


    モームスか?モームスなのか!?


 非常に気になったので、モバイルパソコンから速報を送った。
 この日は西堀の歌のコーナーが予定されており、西堀の歌う曲名当てクイズという
 企画を元川がやっていたのだ。
 練習しながら歌詞の最終確認、というのは有りうる話だろう?


 自分だけ一旦場を離れ、行きがけに見つけた写真屋に出しておいた写真を受け取り
 に行く。昨日の後楽園の写真。三沢をフォールした小橋の新技、うまく撮れていたら
 いいんだけど。
 店に着き、写真を受け取って料金を払うと、フィルム2本と割引券をくれた。
 ISO100のフィルムなんてなかなか使う機会はないだろう。
 でもこの店でしか使えない割引券は、フィルム以上に使う機会はないのだろうな。
 というより、絶対に使わないだろう。そう思いつつ、それらをポケットにねじ込んだ。

 のんびりとまた道場へ。
 例の3本別れ道まで行くと、道場とは違う道を進もうとしている一団を見かけた。
 見たことがある人だ。東バルコでちょくちょく見る人だよな。
 チケット屋に行くエレベータで一緒になって、少しだけ話をした記憶もある。
 間違いなく道場に来たはずだ。

  「プロレスですか?こっちですよー」

  かくして、迷子となるところをすんでで救った。エライぞ、俺!


  「買っといたから」

 道場前に戻ると、チケットを手渡された。ようやくチケットは売り出したようだ。
 人もずいぶんと増え、屋外の準備も進んでいる。


 「さて、もうそろそろだな」

   と。

         どどどどど


 息せき切って駆け込んでくる、影ひとつ。これまた見た記憶のある人だ。


            ・・・駆け込み王、来襲!


 今日はバトラーツに行ってたんだよなあ。ということは、越谷と逆井のダブル
 ヘッダーということになる。
 ・・・参りました(^_^;



 開場。どっと人が雪崩込む。
 うわっ、狭い!
 これが中に入っての第一印象だった。てっきりリングを取り囲む形になると思って
 いたのだけれど、リングは一方の壁にほとんどくっついた形で置かれており、奥行き
 もないために、客が入れるのは四方のうちの一辺だけだった。

 とりあえず席を確保。もちろん、ゴザ席だ。
 後ろを振り向いたら、後から入ってくる人がどんどんと上に登っている。
 普段は荷物置き場にでも使っているのか、ちょっとしたロフトみたいになっている
 スペースがあったのだ。リングを見るには、特等席の位置。
 おそらく予想以上に入りすぎて、急遽開放することにしたのだろう。


  「ええ!?あそこ座ってよかったのかー。知ってたら座ってたのになあ」


 ちょっと悔しい。




 いよいよカード発表。

 「異種格闘技戦エキシビションマッチ3R、宇和野貴志対マーティ浅見」
 うおおおおぉんというすさまじい歓声が沸き起こった。
 もちろん「門田幸子対西堀幸恵」だっておんなじだ。
 物凄い観客の熱気。カード発表の時点でカンペキにできあがってる。




 第1試合、高智(SPWF)が高井(DDT)をジャーマンで降した。
 やはり、リングが近いと迫力も違うなあ。
 音、っていうものがいかに重要かってことも改めて痛感する。





 そしてエキシ、宇和野vsマーティ。
 練習生とレフェリーの試合だから、見るのはもどちらも初めて。
 マーティが社会人レスリング国内3位というキャリアを有しているという事を、
 今日のアナウンスで初めて知った。
 小柄だからプロレスラーは諦めてレフェリーとして、って事なのかなあ・・・
 つまり、プロレスとアマレスの異種格闘技戦ってわけなのだな。
 ゴング。





 驚き。
 両者の目にも止まらぬマットワークはどうだ!!





 優位なポジションを得ようと、激しく回転し続ける二人。
 場内が爆発した。
 目の前の素晴らしいムーブに、興奮が渦を巻くかのように膨らんでいく。


 沸きっぱなしの異種格闘技戦は、宇和野の腕十字で幕を閉じた。
 大歓声と鳴り止まない拍手。すっかり感激した俺は、足の踏み場もないような
 道場のはじっこをすり抜けて退場していく宇和野に握手を求めていた。
 こいつは凄い新人だ!デビューが楽しみだ。
 マーティも実績に違わぬファイトだった。これだったら何度でも見たい!


 第2試合は、門田(二瓶組)vs西堀。


 絶対実現不可能と思われていたIWAファン夢の対戦。門田はプロレス各誌は
 もちろん、女子プロ誌でさえ取り上げられない「プロレス界に存在しない」選手。
 私も彼女の試合を見たのは8.10.12南千住、10.20大泉そして今年
 8.1御殿場SPの三回だけ。当時の印象は「重そう(^_^)」。元川も
 その体重を活かした攻めに泣かされていたっけ。IWAの崩壊と自らの負傷という、
 タイミングの悪すぎるアクシデントが重なり、不本意な形で身を引かざる
 を得なかった門田。新生IWAのメンバーに名を連ねることもなく、一方カルト
 ヒロインとして注目され、各団体から引っ張りだこになった元川の陰で、いつし
 か門田の名は忘れられていった。その後9.6.8に突然国際のリングで市来と
 対戦し、復活。密かに喜んだものの、再び沈黙。あれは幻だったのかと思いきや、
 その年の暮れに二瓶組に入門志願。主にSPWFのリングで千春と対戦するよう
 になった。8.1御殿場で元気な姿を見てほっとした私。
 それでも、
 「いつかはまた、元川とやって欲しい」
 その願いは絶えることはなかった。あの苦しい時代を一緒に過ごした者同士の戦い
 を「今」だからこそ!今日、相手は元川と共に今のIWA女子を支える西堀となったが、
 IWA山田圭介主催興行とはいえ、「もう一つのIWA」とも言えるこのリングで新旧の
 元川の後輩が戦うのだ。これを見ずにいられようか!両者がリングに立って向かい
 合った時点でもう私の目は潤んでいた。そしてゴングが鳴り響いた。





 なぜ、門田にひかれるのだろうか?正直言って体はできていない。プロレスラー
 としての技量もまだまだだ。でも、彼女にはひとつ、光るものがある。
 8.1見たときもそうだった。今日彼女の試合を見て確信した。
 「なんて、楽しそうにプロレスをしているのだろう!」
 明るく、声を張り上げ、自分の最大の武器であるその体重を活かして全力で相手に
 ぶつかっていく。
 それってとても大切なこと。その表情がプロレスをできる喜びに満ちている。
 得意技の門田ドロップが炸裂する度にあがる歓声。もっともっと戦いの場を与えら
 れれば、きっとブレイクできる。そんな気がしてならない。私は声を大にして言おう。
 「たしかに、あなたはプロレス界に存在する」。



 試合は「門田コール」爆発で、そのキャラクターと力を存分に見せ付けたが、全女で
 毎日の様に試合をしている西堀の方がうわ手。コーナーからのスイングDDTからの
 片エビで西堀が勝った。
 門田は8.1と同じようにファンに「ゴメンネ」というかのように手を合わせて退場
 していった。


 西堀についても書いておきたい。今日の西堀は今までで一番良かった。コール時、
 異様なまでに門田に沸き上がる客席。ムッとして門田ファンを睨み付ける西堀。
 そしてこれまで一度も見せたことのない、鬼のような形相で門田に立ち向かって
 いった。そして門田に声援が集中すればするほど、西堀のテンションは上がっていった。
 西堀にしてみれば、いつも全女やIWAでは自分に向けられる声援がほとんど相手に
 持っていかれてしまっているのだ。今や、キャリア、実力も門田に負けるわけないと
 思っている西堀にとっては許し難いことだったのだろう。気迫に満ちた今日の西堀は
 このところの全女での「?」なファイトは微塵もなく、技も的確に決まっていたし、
 スワンダイブもきれいに成功!そして、勝利を収めた。それでも試合後、門田に
 ストンピングを浴びせるなど、彼女の怒りはおさまらないようだった。私は思った。
 「その気迫を全女でもみせてくれ!」
 そうすれば、きっと皆の見る目も変わってくるはず。




 きっと今日の西堀には門田に対する「嫉妬」があったのだと思う。自分が今のIWA
 女子を支えているのに・・・というものがあったのだろう。ならば今日の悔しさを忘れ
 ないでくれ!いつもいつも西堀には厳しい事を書いてしまうけど、私が言いたいのは
 そういう事。IWA女子は元川、西堀二人の頑張りにかかっているのだから。
   
written by 和田ぴょん (スポーツ冒険家)



 第3試合、松田・レイボーン(SPWF)vs新岩・勇作(DDT)。
 レイボーンという選手は初めて見る。
 カーボウーイスタイル。指でピストルの形を作って「バーンバーン!」。
 観客が仕草に合わせて声を上げる。
 SPのファンもいっぱい来てるんだなあ。
 アメリカンな感じが楽しいよ。
 試合を決めたのは松田のラリアット。
 新岩を押え込んでの勝利だ。







 ■休憩
 肉じゃが vs おしるこ
 △肉じゃが(甲乙つけがたし!)おしるこ△

 別に休憩中に試合があったわけではない。屋外に並んで軒を連ねた、
 元川肉じゃが店と西堀おしるこ店という、おはなし。

  「元川恵美特製」

 そう銘打たれた張り紙。「松永兄弟直伝」でもあるらしい。
 人がぞろぞろと集まる中、元川が声を張り上げた。


  「山田社長が朝から煮込んだ肉じゃがですよー!」


 ・・・夢を見させておくれよ・・・
 さっさく買いに走る。盛ってもらう間にちろっとお話し。
 北千住に続き、生涯2度目の会話。
 ビールなども飲みながら食べる。おいしいなあ、元川、もとい社長特製(^_^;
 一息ついた後、おしるこも食べた。


   
photo by 和田ぴょん (スポーツ冒険家)



 その他にも福袋の販売があったりして、ちょっとしたお祭り気分。


  「はい、福袋いかがでしょー!?」


 IWA JAPAN広報・押江さんの威勢のいい売り込みがあまりに魅惑的すぎて、当然
 の如く購入する。



 観客がぞろぞろと道場の中に入り始めた。どうやら再開されるようだ。


  「次って歌のコーナーですか?」


 肉じゃが店の店主に聞いた。


  「ええ。私も何歌うんだかまだ知らないんですよ」


 本当にモームスか?モームスなのか!?


(つづく)


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