新・武道館物語
BUDOKAN STORY
Vol.27_2

PRO-WRESTLING NOAH   July 27th,2001(Fri.)
Accomplish Our First Navigation 



第8試合 GHCジュニアヘビー級選手権 
 金丸義信 (選手権者) 
      vs
 ドノバン・モーガン (挑戦者) 
照明を落としたリング上にそそくさと数名のスタッフが入る。
なにやら大き目のシートを敷き、その上に4本ほどの円筒をセット。
あ、これはバーンだな。とりあえず、心の準備だけは早目に済ませた。
案の定音楽が鳴って終わった瞬間に、バーン!

ひゃあ!

いつもなら俺の叫び声だが今、日は違ったね。
16499人の「ひゃあ!」。俺は泰然自若、微動だにしない。

GHC初代ジュニアヘビー級王者、金丸。いつの間にか奥行きのあるプロレスをする
ようになったものだ。序盤のじっくりとした手の内の探り合いの雰囲気なんて、
「ああ、タイトルマッチだなあ」と実感できるものがあった。
モーガン、エプロンから飛んだ金丸を受けとめてのみちドラU(?)。
ギロチンドロップを1発、2発、3発目は行かずにくるりと回転、何をするのかと
思ったらつばをぺっ。
今回の外人勢、それぞれがそれぞれに何らかのスパイスを振りまけるあたりが素晴らしいね。
対する王者もやり返す。ベルトを持ち出して殴打(^_^)、コーナーに逆さ吊りにして
つばをはいて(^ー^)顔面への低空ドロップキック。手首のテーピングをぐるぐるとほどいて
もちろん首絞め(^o^)。その後、モーガンの猛攻をしのぎきって攻勢をかける。
ムーンサルト。垂直落下式ブレンバスター。決まりか?しかし首を振ってカバーに
行かない金丸。とどめを刺す気だ。
ここで考えた。どっちなのだろう?
あくまでムーンサルトにこだわるか。再度垂直落下で決めるか。
もし後者ならそれは、今後フィニッシュホールドとして使っていくという所信表明みたいなものだ。



後者だった。プロセスを強化してムーンサルト・ピンフォールの説得力を高めるというのも 一つの方法だが、俺は後者の支持者だ。いや、別に垂直落下でなく何だっていいんだが、 「何か別の強力なモノ」は王者としては必要不可決なものだったと思う。 あ・・・ひょっとしたら垂直落下、ライガーへのラブコールっていう意味があったりするのだろうか?


ベルトが戻った。カメラマンにポーズを取る。 と、そこに現れた黒い影ひとつ・・・・・リーダー! 金丸を急襲してマイクを握る。 もちろん、挑戦を受けろ!ってやつだ。


しかし・・・・ 「噛むな〜!」というツッコミが各所から沸き起こっている。 うーん。めちゃくちゃ面白いからいいんだケド(^_^;
×モーガン(17分22秒、垂直落下式ブレンバスター)金丸○
(金丸は初防衛)


セミファイナル
 森嶋猛 力皇猛
      vs
 大森隆男 高山善廣 
入場。今日は観客の反応をじっくりと観察できる絶好の位置にいたためか、色々と
感じ入ることが多かった。
この試合もそう。高山だよ。凄い歓声だったな。待ってたぞ!というムード。
いつものようにトップロープ越しにリングイン。
4人がそろうとプロレスだなあっ!って気がする。やっぱり、「どでかい男たちの
ぶつかり合い」というのは間違いなくプロレスの魅力の一つだから。
試合はタケシ軍の奇襲でスタート。息をもつかせない怒涛の攻めだ。
短期決着狙いというのは2チームの力量差を考えた場合、当然の正解。
連係も今までと変わらず。対するタケシ軍、最大のビッグサプライズはダブル・インパクト!



いいねえ。ただタケシ軍、組む試合が増えてくるにつれてますますはっきりしてきた
のが二人の差。気の強さ、当たりの迫力、受けの強さ・・・今のところどれを取っても
力皇の方が上でしょ。凄いよ力皇は。キツいのさんざん食らってもめったに倒れないしなあ。
近い将来、対戦相手が打ち合いで倒しただけで大喝采を浴びるという、
そんなレスラーになれると思うよ。

大森。
ぶちかましを浴び、勢い余って倒立状態にまで跳ね上がり、再度どすんと崩れ落ちた。
やっぱ高山いると・・・・生き生きしとるなあ(^_^;
「オヤジー!」と叫んで一の矢。
「クソオヤジー!」と叫ん二の矢。
森嶋の「”声”だ。少なくとも今の森嶋に求めるはもっと別のものだから、
こんなものでは評価はしないよ。
NO FEARが腕を撫す。ダブルアックス!力皇かわして大森にぶちかまし、続けて高山
に突進するも、”あの”膝がカウンターで入った。
最後は大森が森嶋を押さえ込む中、高山の高角度ジャーマン。
終わってみれば危なげなし、か。

×力皇(12分47秒、ジャーマンSH)高山○

さて、いよいよメイン・・・・また暗転している場内にざわざわという音が
満ちている。それを一気に打ち破ったのは、一点のスポットライトだった。
なんだ?永田?
NOAHのテーマが流れて歓声が一つになった。小橋だ!



圧倒的な小橋コール。俺も叫んだよ。小橋に対してはことごとく冷静なスタンスを 通してきた俺が、生まれてはじめての小橋コールを自然に叫んでたよ。 自身のテーマが流れなかったのは、復帰戦を待ってという団体の配慮なのだろう ・・・細やかな心遣いだよなあ。 リングに上がる小橋。 しばし顔を水平よりもずっと上にあげ、会場を見渡していた。 何を思ったのだろう? ファンに対する感謝、リングに立つことへの震え、されど試合はできない悔しさ・・・ 「必ず復帰する!」 一度たりともも絶えたことがないであろうその思い。 今日リングに上がった小橋の中で一番大きかったのは、この思いを改めて確認できた ことであったろう。強く。実感を伴うものとして、例えようもない程に、強く。 復帰の前に現場に姿を現すことに、俺は反対していた。見る側のこだわりの問題 でもあるし、焦らせるだけではないのか、という不安もあったし・・・・ でも、信じる。ぐるりを静かにゆっくりと見渡していた小橋を見て、確信した。 今日の来場が、必ずやプラスに働くということを。 マイクを握り、復帰まで姿を現すのはこれが最後だ言明した小橋。 そして必ずリングに戻ってくると誓った小橋。 四方に一礼、解説席に向かった。 見れて、よかった。





メインイベント  GHCヘビー級選手権 
 三沢光晴 (選手権者) 
   vs
 秋山準 (挑戦者) 
再度スタッフがリング上でわさわさしている。アノ、円筒がまたも!
初めて心の準備に入った16499人の観衆と、相変わらず不動岩の如きあちし。

バーン!

ひゃあ!

16500人が叫んだ。ジュニアのときより爆発、さらに大きかったね(^_^;

いよいよ入場、まずはチャレンジャーだ。
スモークの漂う中、凛然と立つ秋山の姿が美しい。


しかし、永田の姿はない。 一人で歩を進める秋山。もうすぐエプロンというあたりでくるっと踵を返した。 指を差したそこには・・・ 永田!場内爆発。秋山は場に留まり、永田がやって来るのを待っている。 そして永田はセカンドロープに腰掛け、トップロープを押し上げた。 秋山リングイン。
チャンピオンの入場。 何の飾りもない入場。シリーズを通して展開されていた「仕掛ける秋山」と 「仕掛けない三沢」を総ざらいするかのような、象徴的で好対照の入場シーンだ。 三沢、凄いな。熱狂的な三沢コール、上気した観客の顔。
ついさっきまで大沸きだった秋山と永田の事なんて、もうどこかに吹っ飛んで しまったかのようだ。 ゴング。秋山は積極的にエルボーを仕掛けていく。 かつて高山がエルボーを仕掛け、返り討ちに合った試合がある。 三沢のエルボーは単なる技ではなく人格なんだから、単なる技で対抗しても 勝てないのは当然。あのときはそう書いた。 これは今日の試合においても例外ではなかった。秋山はことごとく跳ね返されていく。 シフトチェンジ。エプロンから鉄柵に向かってのカーフブランディング、 ゴッチ式パイル。コーナに三沢を追い詰め、足で押さえつけていく。
三沢にスイッチが入った。怒りのモードだ。
スッと体を起こし、真っ直ぐに相手を睨みつける時の三沢は本当に恐い。 ・・・と。 秋山が下がった。ほんの一歩くらいだったが、あの秋山が後ずさった。 エルボーを乱打する三沢、たまらずダウンする秋山。 三沢、フェースロkック。サイクロン・ホイップでの切り返し、トペエルボー。
なんという強さ、そしてうまさ。 逆襲に転じた秋山、ナガタロックU。串刺し式の延髄ジャンピングニー、エクスプロイダー。 しかし、最大級のインパクトをもたらしたのはやはり三沢だった。 トップロープでもみあう両者にどよめく場内。ほどなく三沢は秋山の両脇に手を 差し入れ、クラッチする。 まさか・・・・場内のどよめきが急激に増大する。
雪崩式タイガードライバー! 凄すぎる。技の威力もそうだが、何よりもあの困難な位置からこれほどまで 正確に放てるという事に対してだ。 エルボー、タイガードライバー、エルボー。波状の、怒涛の攻め。
しかし、秋山は秋山だった。折れない。ここまできても折れない。 エクスプロイダーで流れを断ち切るとジャンピングニーから垂直落下、 そしてフロントネックロック。カバーにいくもカウントは2。 遂ににこの瞬間が訪れた。ワンハンドクラッチエクスプロイダー! しかし、2。この技が一発で決まらなかったのは、おそらあくこれが初めてだろう。 連打、
渾身のエビ固め、
カウント3。
×三沢(24分11秒、リストクラッチ・エクスプロイダー)秋山○
秋山、遂に腰に巻いた、生涯初のシングルベルト。


ベルト授与の後、アナウンサーがリングに上がる。 「新チャンピオン誕生、秋山準選手です!」 ここで自らマイクを掴んだ。 「この一年間、NOAHがこの武道館に来れたのも、みなさんのおかげです。 俺のキャラじゃないけど、ありがとうございます。 これからももっとNOAHを良くします。以上です。」(大意) 言うだけ言ってアナウンサーを追い払った秋山。 ・・・秋山だ! リングを降りて小橋と握手。 世界中で一番熱烈な小橋ファン。 それが秋山準の持つ、もうひとつの顔。 王座からすべり落ちた三沢。 しかし・・・言おう。 ZERO-ONE帰りの飲みの時だったか、友達に語ったことがある。 いずれ三沢が時代から引きずり降ろされる日が来る。 仮にその時、幕を引こうとしているのが秋山だったとしても・・・ 多分俺は、泣きながら「ミサワーッ!」って叫んでいると思う。 でも今日、そうはならなかった。 最後の最後まで、俺は秋山を後押ししていた。つまりそれは、三沢が王座 からは転落しても、時代からは引きずり降ろされなかったということなのだ。 この皮膚感覚だけは、誰が何と言おうとも信頼する。確かだ。 三沢は落ちていない。秋山は越えていない。いまだ三沢の時代なんだ。 人がどう取ったなんてどうでもいい。 俺にとっては、三沢光晴の存在が益々膨張した試合だった。 社長としての三沢へ。 三沢、本当によく頑張ったよ。焦らず、こつこつと積み上げること、一年。 ファンはそれを知っているからこそ、頼り切る。 三沢に任せておけば大丈夫!ってさ。 みんな感じているよ。 「男気」や「侠気」って言葉が誰よりも似合う男だってね。 お帰り! 久しぶりの武道館物語。いったいどんなタイトルになるのだろう・・・ 前もって予想していたのはこの言葉だった。 でも、武道館を後にしながら破棄だな、と思った。 そんな感覚じゃない・・・・ 考えた。 新しかったのだ。ハード面とか試合内容とか、具体的なものもそうでは あるのだけれど、もっと何か全体的に感じた、「あの頃の」武道館とは違うものを。 お帰り! それはこちら側が感傷にひたっていただけの台詞なのではないか? 思っていた以上にNOAHは新たな道を進んでいた。 そうか、分かった。 ようこそ! なんだ。 はじめまして、NOAH。 僕たちの武道館に、ようこそ!

[BACK]